【映画】「華氏119」、2018年、128分

アメリカの銃社会に風穴を開けた「ボウリング・フォー・コロンバイン」や医療問題を取り上げた「シッコ」など、巨大な権力に対してもアポなし突撃取材を敢行するスタイルで知られるドキュメンタリー監督のマイケル・ムーアが、アメリカ合衆国第45代大統領ドナルド・トランプを題材に手がけたドキュメンタリー。タイトルの「華氏119(原題:Fahrenheit 11/9)」は、トランプの大統領当選が確定し、勝利宣言をした2016年11月9日に由来。ムーア監督の代表作であり、当時のジョージ・W・ブッシュ政権を痛烈に批判した「華氏911(Fahrenheit 9/11)」に呼応するものになっている。16年の大統領選の最中からトランプ当選の警告を発していたムーア監督は、トランプ大統領を取材するうちに、どんなスキャンダルが起こってもトランプが大統領の座から降りなくてもすむように仕組まれているということを確信し、トランプ大統領を「悪の天才」と称する。今作では、トランプ・ファミリー崩壊につながるというネタも暴露しながら、トランプを当選させたアメリカ社会にメスを入れる。

マイケル・ムーア 監督/脚本
1954年4月23日、ミシガン州フリント生まれ。
父と祖父は組み立て工、母は秘書、叔父は自動車工労働組合創立者のひとり、という家庭環境で育った。10代の頃から政治活動に目覚め、高校を卒業した年には校長と副校長の解雇を求め教育委員会選挙に出馬、当選。辞職に追いやった。地元の大学を1年で中退。ジャーナリストとして22歳で地元紙を刊行、30代前半に西海岸に渡り編集者を務めるが5ヶ月で地元に戻る。89年、ゼネラル・モーターズによる大量解雇に揺れるフリントと当時のGM経営者ロジャー・B・スミスにアポなし突撃取材を敢行したドキュメンタリー映画『ロジャー&ミー』を製作、批評家の絶賛を浴びる。その後、テレビの世界にも活躍の場を広げ、独自の取材スタイルを通じて批評精神に溢れたユニークな番組を生み出していった。98年TV番組「マイケル・ムーアの恐るべき真実 アホでマヌケなアメリカ白人」が話題に、人気を博した。02年、アメリカ銃社会の抱える問題点を鋭くえぐった『ボウリング・フォー・コロンバイン』を発表、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞のほか、カンヌ映画祭特別賞など数々の賞を受賞。また、ジョージ・W・ブッシュ大統領をこき下ろし、返す刀で民主党をも一刀両断にしたノンフィクション「アホでマヌケなアメリカ白人」は全米でベストセラーに。04年には、9月11日の同時多発テロ以降のアメリカ社会をテーマにブッシュ政権の実態に迫る『華氏911』を発表、カンヌ映画祭最高賞<パルムドール>を受賞。批評、興行両面で大成功を収める。その後、『シッコ』(07)では米医療保障制度に、『キャピタリズム マネーは踊る』(09)では、アメリカの資本主義の不条理さに、『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』(15)では、各国を巡りアメリカにはない様々な制度や文化を皮肉たっぷりに紹介し、アメリカの由々しき現状に、ことごとくメスを入れ続けた。
あらゆる権力からの抵抗にもめげず、ユーモアを身に纏い、一貫してアメリカ社会の銃、人種問題、政治、企業の不正に対して猛然と闘いを挑む不屈の異端ジャーナリストとして、作品を世に放ち続けている。

2021/02/23

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